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2020年9月4日

第13回『株式市場レポート9月より抜粋』

<2020年8月の投資環境>

 2020年8月の株式市場はTOPIXで前月末比+8.2%、日経平均株価は同+6.6%といずれも前月末比プラスとなりました。

月初は各国のコロナワクチン開発への期待が高まったことや、ユーロ圏や中国、米国で製造業景気指数が好調な内容となり景気回復期待が高まったことなどから、内外の株式市場は総じて堅調な展開となりました。
 その後もトランプ米大統領が失業給付の増額など追加経済対策の大統領令を発令したことで米景気の先行きに安心感が広がったことから、それまで出遅れていた景気敏感株も総じて堅調に推移する展開となりました。


<9月の株式市場見通し>

 ~主要各国では感染拡大ペースは徐々に落ち着きつつも、全世界的には感染拡大ペースは衰えず~
 現時点(9月2日)での全世界における新型コロナウイルスの感染者数累計は2,580万人と、依然拡大が続いています。うち米国が619万人と最も多く、次いでブラジルが400万人、インド377万人、ロシア100万人と続き、日本は69,001人となっています。

 また新型コロナウイルス感染による死者数は85.9万人、うち米国が18.8万人と最も多く、次いでブラジル12.4万人、インド6.6万人、メキシコ6.5万人、英国4.1万人と続き、日本は1,307人となっています。

 全世界の感染者のおよそ24%が集中する米国では、累計の感染者数は上記の通り600万人を上回る事態となり、アルツハイマー病や事故、糖尿病などを抜いて、米国人の死因の第3位に浮上する事態となりました。

 日本では東京を中心に7月以降新規感染者数の増加傾向が続いていましたが、8月20日、日本感染症学会で政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長が講演を行い、現在の流行について「今後の推移に注意が必要だが、全国的にはだいたいピークに達したとみられる」とする見解を示しました。
1日当たりの全国の新規感染者は1,000人割れが続いており、現在はある程度リスクを制御できている状況にあると考えられます。ただし秋以降の感染再拡大の可能性に向けては、引き続き警戒が必要と思われます。

~景気及び企業業績の状況~
 米国では8月7日に発表された7月の米国雇用統計で、非農業部門雇用者数が前月比176万人増と事前予想(148万人増)を上回りました。
 失業率は事前予想10.6%に対して10.2%に低下と、3ヶ月連続で雇用の改善を示すものとなりましたが、失業率は低下しつつも高止まりしており、雇用市場はコロナ前の水準には依然程遠い状況にあります。
 懸念されていた7月末で失効する失業給付金に関しては、トランプ米大統領が新型コロナウイルス経済対策を実施する大統領令に署名し、失業保険給付に追加の給付額を上乗せする措置が復活することになりました。

 8月14日に米国商務省が発表した7月の小売売上高(季節調整値)は前月比1.2%増となり、3ヶ月連続のプラスとなりました。上げ幅は過去最大となった5月の同18.2%増、前月(6月)の同8.4%増から縮小しましたが、小売売上高総額は新型コロナ感染がパンデミック(世界的大流行)となる前の水準を上回りました。
 同日、米連邦準備理事会(FRB)が発表した7月の鉱工業生産指数(2012年=100)は100.2となり、前月の改定値から3.0%上昇しました。3ヶ月連続の上昇となり、上げ幅は事前の市場予測(同2.8%増)を上回り、コロナ危機からの回復が続いていることを示すものとなりました。

 欧州では、欧州連合(EU)統計局が8月5日に発表したユーロ圏の6月の小売売上高は前月比5.7%増となりました。事前予想(同5.9%増)は下回りましたが、ロックダウン(都市封鎖)導入前の今年2月の水準を回復し、5-6月の増加で3-4月の減少分を全て吸収した形となりました。

 中国では、国家統計局が8月14日に発表した7月の鉱工業生産は前年同月比4.8%増加しました。伸び率は事前の市場予想(同5.1%)を下回りましたが、4月以降4ヶ月連続での増加となりました。
 国家統計局が8月31日に発表した8月の製造業購買担当者指数(PMI)は製造業のPMIが51.0%で前月比▲0.1ポイントとやや低下しましたが、非製造業ビジネス活動指数は55.2%と同1.0ポイントの上昇、製造業と非製造業を合わせた総合PMIも54.5%で同0.4ポイント上昇と、これら3大指数は6ヶ月連続で好況不況のボーダーラインとなる50%を上回りました。

 一方、消費活動に関しては7月の小売売上高は前年同月比▲1.1%と、市場予想(同0.1%増)に反してマイナスとなり、7ヶ月連続での減少となりました。
 商業施設や飲食店の閉鎖等の厳しい感染抑制策は緩和されているものの、客足の戻りは依然鈍い状況が続いています。

 日本では経済産業省が8月31日に発表した7月の鉱工業生産は前月比8.0%上昇の86.6となりました。2ヶ月連続での上昇となり、生産の基調判断は「下げ止まり、持ち直しの動きがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正されました。

 8月11日に内閣府から発表された2020年7月の景気ウォッチャー調査(季節調整値、調査期間:7月25日~31日)では、現状判断DIが41.1と前月から2.3ポイント上昇する一方、先行き判断DIが36.0と前月から8.0ポイント低下しました。
 現状判断DIは4月に7.9まで落ち込んだ後、5月から3ヶ月連続で改善しました。一方、先月まで2ヶ月連続で改善していた先行き判断DIは7月で下落に転じることとなりました。

 このように主要各国では、相次いで打ち出された積極的な財政政策及び金融政策の成果と経済活動の段階的再開に伴い、景気底入れを示す指標も増加しつつある一方で、先行きに対しては企業、個人ともに慎重なスタンスを強めつつあります。特に秋口以降の感染拡大第2波への警戒感も強い中、今後経済活動が順調に進んでいくかは予断を許さない状況にあります。

 企業業績については、調査会社リフィニティブによると、S&P500指数構成企業の4-6月期の業績予想(当期純利益)は前年同期比▲33.2%となる見通しです。コロナ禍での大幅な落ち込みとなりましたが、ITセクター及びヘルスケアセクターを中心に決算発表企業の80%以上が事前予想を上回る結果となりました。

 7-9月期は同▲22.5%と減益は続くものの減益率が縮小すると予想されており、4-6月期が減益率の大底となる見通しとなっています。

 国内企業については2020年4-6月期決算発表では、前年同期比で売上高は▲17%減、営業利益▲51%、経常利益▲48%、純利益▲63%という結果になり(株式会社QUICK集計)、特に石油・石炭製品等8業種は赤字に転落するなど厳しい決算となりました。

 米国企業同様、四半期ベースでは4-6月期が大底となり、7-9月期以降は減益率の縮小が見込まれ、2020年度通年の経常利益の伸び率予想は前年度比▲15.4%となっています(ただし、これも新型コロナウイルスの感染拡大第2波は想定していない前提での見通しとなっています)。

~今後の株式市場見通し~

 主要国の経済指標は、経済活動再開に伴い改善基調を示す指標が相次いていますが、水準としては生産及び消費活動ともにコロナ以前の状態には依然程遠い水準にあることを鑑みると、足元の市場は実態以上に上昇している可能性があります。

 8月31日時点でのNYダウのPERは28.4倍と、直近1年間の中心レンジである17倍~21倍を上回っている水準にあります。
 日経平均株価については、8月31日時点でPBRは1.10倍と、BPS(一株当たり純資産価値)21,036.15を上回っており、PERは22.04倍とやや割高な水準にまで上昇しており、2021年3月期業績予想が悪化した場合にはバリュエーションがさらに悪化するリスクが加わります。

 本レポートでは従来、各国金融市場における重要な要因のうち、注視すべき項目として、①米中貿易摩擦、②米国の金融政策、③各国の景気及び企業業績、④英国のEU離脱問題、⑤米大統領選挙、⑥地政学的リスク、⑦新型コロナウイルスの感染拡大の7つの要因に注目してきました。

 ⑦の新型コロナウイルスの感染拡大については、主要各国での特に秋口以降の感染再拡大の有無及びインド等の新興国での感染拡大状況及びそしてワクチンや治療薬の開発動向を引き続き注視していく必要があります。

 ②の米国の金融政策については、パウエルFRB議長がジャクソンホールでの講演で表明したように、FRBの物価目標を期間平均で2%を目指す「平均物価目標」へ変更したことに伴い、インフレ率が2%を超えてオーバーシュートする期間を容認し、現在の緩和政策が長期化する可能性が高まり、これは株式市場の支持要因になるものと考えられます。
 ①の米中貿易摩擦については、米国は、新型コロナウイルスへの対応や香港国家安全法の制定などで中国政府を強く非難しおり、また中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)など中国のハイテク企業への制裁を実施するなど、コロナ問題発生後は中国に対する攻勢を一段と高めています。
 また米中両政府の閣僚級による貿易協議が、当初予定の8月15日から延期されることになりました。一方、中国商務省の高峰報道官は8月20日の記者会見で、アメリカ側との協議を近く開催することを明らかにしました。両国の対立は深まりつつも、引き続き対話の余地も残されているものと考えられます。

 ③各国の景気及び企業業績については、前述の通り、2020年4-6月期の決算発表ではヘルスケアやITセクターを中心に事前予想を上回る決算も見られ、主要各国において企業業績は7-9月期以降回復に向かう見通しとなっています。

 現在の米国市場ではゼロ金利政策により実質金利がマイナスとなっており、且つFRBはインフレ期待政策を維持しています。つまり金利が失われた中で供給された資金は「流動性の罠」と言える状況になっており、ゴールドや株式市場に流れ込み易くなっていることは、日銀のゼロ金利政策からも検証できます。
 実質金利がマイナスとなる中でインフレ期待が維持される限り、(何時まで続くかは分かりませんが)株式市場に資金が流れ込み易い構図が続くと考えられます。

 このような過剰流動性を意識する中で、コロナ禍の影響を受け辛い、または追い風を受けると思われるGAFAを代表としたIT銘柄やバイオ関連の銘柄が物色され続けており、日本市場も米国市場の影響を受けた動きとなっています。
 それ故、従来型のバリュー銘柄(割安株)や業績連動銘柄より、DXをテーマにしたテクノロジー(グロース)銘柄やコロナワクチン関連の銘柄が物色され易い展開になっていると想像できます。

 新型コロナウイルスの感染拡大第2波の懸念も残る中、企業業績が市場の期待通りのペースで回復していくのかなどにも注意が必要であり、同時に米中間では通商・貿易面のみならず、南シナ海を舞台に軍事的緊張が高まりつつあります。

 これからの投資についても上記に配慮しつつリスク要因には充分に警戒し、慎重なスタンスで臨むことが求められます。

― JIA証券 株式市場レポート9月号より抜粋 ―

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